次は『レディー・デイの肖像:ビリー・ホリデイ』を取上げてみます。
實はレスター・ヤングの良さが分かるやうになるまで、隨分時間が掛かりました。こちらがまだ初學者だつたこともあるのですが、最初の印象は、兎に角掴みどころがないといつたものでした*1。何年も繰り返し聽き返してみては、壁にぶつかつて跳ね返されてゐたものです。
そして或る時この CD を聽きました。1930年代頃のアルバムなのですが、ビリー・ホリデイとレスター・ヤングが何曲か共演してゐるのです。
そこには、何かが起こつてゐた。ビリーがテーマを歌ひ、レスターのほんの八小節程の短いサックスソロが合はさることによつて、特別な時間が流れてゐる。この時初めて今まで聞き取れなかつたレスターのトーンやヴォイスを感じることが出來ました。
こゝから私のレスター・ヤング人生が始まつたのでした。
*1:ある意味、まだコールマン・ホーキンスやベン・ウェブスターの方が分かりやすかつた。