- 作者: 笹原宏之
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2006/01/20
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頁を捲りながら“漢字の正しさとは何か”と云つた問ひが頭から離れず考へ込んで了つた。面白漢字の蘊蓄本みたいに讀めたらいゝのだけれど。
以下は著者のスタンスがよく表れてゐる一文。
すでに触れてきたとおり辞書は、絶対的な基準を示せるほど日本の現在までの文字生活の実体を記述していない。編者の規範意識により排除された場合と、目に触れられず漏れてしまった場合とがある。漢字に関する政策も、いわゆる正字法を確立させる段階にはなお至っていない。よく漢字についての基準と見なされる『康煕字典』でも、掲げた字種は実は選択されたものであり、その字体も書くための字体ではない。さらに内部で矛盾する字体さえもあり、無批判に典拠とすることはできない。
むしろ、明治期に教育者、黒柳勲が異体字を集めて編んだ.『俗字畧字』に説くように「死んだ正しい文字」より「生きた俗字略字」の方が、文字としては価値がある、と言うべきではないか。それらは、敷き写しされた死字、廃字、古字のたぐいや、訛伝や衒学などによって辞書上にしか伝存しない、元は架空の字体であった幽霊文字よりも重要なのである。
たとえ全国的、一般的に共通する文字でなくても、特定の社会においては「正しい文字」として用いられることがあるように、文字にとっての正しさとは相対的なものである。字源説や典拠、歴史にのみ価値を認め、辞書に載っているからといって死字でも正しく、載っていないものは通行していても正しくないということは、辞書というもののもつ規範的、記録的な性質や古典の読解、現代の用字についての確認などの用途からみて、首肯しがたい。
- 作者: 大島正二
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2003/01/21
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字書や漢字に關する文獻の歴史を扱つてゐる。
即興詩人を隨分と褒めてゐる。いつか組んでみたい。