生活記録

日々のこと(旧はてなの茶碗)

讀了

日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫)

日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫)

文字の話は氣になる。塚本学の報告による以下の話が面白かつた。


同年代の領主から村に来た年貢の割付状と、百姓同士の取り交わした売買証文をとをある年代を区切って並べてみたところ、書体の変化は明らかに領主側から起っていることが明らかになったと報告しています。

しかもきわめて短時間に、早いスピードでその変化が百姓の世界に伝わっていく。領主側の書体がかわると、百姓の書体―少なくとも領主向けの文書の書体が変わっていくのだそうです。この書体の変化は明治のときは劇的です。それまで御家流だった書体が、明治四年(1871)の廃藩置県のころを境にして、がらっと変わってしまいます。


この変化はさきほど申しました、国家の文書主義の影響、国家そのものの影響といわざるを得ない。(略)ただ、このような書体は公文書の世界でのことで、書状の書体や、もっと私的な日記の書体は、決してこのようにはなっていないと思うので、こうした点を考えてみると、江戸時代にも、表の世界とはまったくちがった裏の動きがあったことは十分考えられると思います。

ただ最初にのべた文書の世界での均一性は、明らかに上からかぶさってくる国家の力があり、それに対応しようとする下の姿勢が一方にある。しかもそうした姿勢が、古代以来きわめて根深く日本の社会にあるということを考えておく必要があると思います。