生活記録

日々のこと(旧はてなの茶碗)

讀書つれづれ

銀鼠ぼかし

埴谷雄高『死霊 I*1、II*2、III*3』(講談社文芸文庫)讀了。十年位前に七章まで通讀してゐたが、挫折してほつたらかしにしてゐた。最近文庫になつたのでまた再讀し始めた。ハードカバーだとなかなか手にとれない。

十年前よりは、少し理解出來るやうになつた。それでも読み隨ら頭の中が攪拌されるやうな心持になる。こゝまで人は考へられるものなのかと大いに驚嘆してゐる。

筆者は獨房の壁の向うに無限大をみたと云ふ。私はこの本から無限大を垣間見た。

それから、たしかに形而上を扱つてゐる小説ではあるのだが、思ひのほか文章が面白い。スラップスティックであり、コミカルと言つていゝくらゐではないだらうか。熱に浮かされたやうな、一種狂躁的な語り口など、かなりそこかしこに影響を與へてゐる。