十四日の夕方,神田明神奉納薪能を觀に行く。 能樂を觀るのは生まれて初めてだ。屋外といふのも氣分が盛り上がる。
笙や篳篥, 龍笛のえもいはれぬ響きが廣がる。 神樂殿では打樂器(釣太鼓,鼓,羯鼓)が打鳴らされるなか, 火入れ式が行はれる。
仕舞「嵐山」,能「羽衣」を觀る。鳴り物や地謠を從へ,裃を着た, または面をかぶつた出立ちのおぢいさんが舞ふ。 何せかういふのを見るのも聞くのも初めてなので, 正直,直ぐさま樂しめるといふものではなかつた。 尤もこれはあくまでも明神樣に奉納するものなのだから, 勝手にこちらが樂しまうとするのは料簡が違ふのかもしれない。
日も暮れてあたりが暗くなる。屋外ならではの雰圍氣が良い。 それにしても地謠にしろ能の臺詞といふのは聽いてゐて新鮮だ。 これも日本語なのだなあと。