東洋美術学校にて山本太郎氏と鈴木功氏のお話を聞く。以下覺書を記す。
第一部
初めに山本さんがAdobeに於ける書體設計に就て話をする。漢字(小塚明朝)を中心にあれこれ。
漢字は何分數が多いので、如何に效率よく(しかも品質を落とさずに)設計するかに主眼が置かれてゐる。茲では、漢字をエレメント(はらひやはねといつた要素)毎に分解し、基本となるエレメントを作る*1。そして共通のエレメントを持つ漢字を拔き出し、エレメントの差が小さい順に竝べて作成する事によつて作業の省略化や效率化を成し遂げてゐる。さらにいへばエレメントの相對的な位置情報を較べる事*2で、その書體ファミリーの作成にも對應する事が出來る。
これは千や萬といつたオーダーをこなすのであれば有效な方法であると思つた*3。逆に數が少ない時(百位の單位)であるならば、一つづつ作る方が早い事もあると云ふ。
歐文書體ではGaramondを取上げ、同じGaramondでも見出し用・本文用・キャプション用などではどのやうにデザインが異なるかを説明してゐた。
書體開發のツールとしてIllustratorを改造した*4TWB225と云ふアプリを使つてゐた。Classic上で動作するから可成りの年代ものなのだらう。
因に實際に山本さんのお話を聞いて居て、グーテンベルクの隠れ家を讀んだ時の印象とは、また隨分と異なる印象を受けた。
第二部
續いて鈴木さんのお話。主に寫眞を映し出しながら、これ迄の書體との關はりから、Type Projectでの職場の樣子や氛圍氣を傳へてゐた。
他には、AXIS Fontの解説やどのやうな媒体に使はれてゐるか等紹介してゐた。AppleやCanonにも使はれてゐる。
UltraLightの事も幾つか。和文書體の持つ概念を擴張する事が出來たと云つてゐた。
(フォントの)使ひ方や用途が限定される事によつて、逆にそのフォントのデザインをどのやうに仕上げるかを確信を持つて決められる
と云ふやうな事が耳に殘る。
AXIS Fontを使つてみたくなるが、尤もまだ用途が思ひ浮かばない。新ゴLよりも字面が小振りにみえるので、まとまつた量のキャプションを組む時には試してみたい。
第三部
最後は司會の方がテーマを振りながら、兩者の話を聞く。
- 何故タイプフェイスを職業として選んだか
山本さんが大いに語る。
- タイプデザインの將來の方向
- 紙に印刷された文字とディスプレイ上の文字。
- 殘る文字とすぐに消える文字との違ひ。
- 私的な使はれ方をされる文字とパブリックに扱はれる文字の關はり。
夫々作り手にとつて現在は端境期にある。
- タイプデザインの勉強法
- 古い漢字や起源に觸れることで、漢字の構造を意識する。
- 今と云ふ時間の廣がり。
- 文字の機能性、歴史性、娯樂性
- 色々な興味を持つ。歴史を掴む。
- 價値觀を持つ。
- 本物を見る。
- 質の探究。
- チャレンジングの姿勢。
質疑應答では、和歐混植の講座が始まる。
あとAXIS Fontには何故Blackがないのか*5と云ふ質問はよかつた。徒者ではない。