後半はレイ・アルフォンソ正田さんの歌と演奏。 ポンチョを纏つた出立ちだ。狹い會場とはいへマイクもアンプもなしに, ギターをかき鳴らし,それは大音聲で朗々とユパンキの曲や,ラテンの名曲を歌つた。
私は眞ん前で齧り附きになつて聽いてゐたが, ちつともうるさくは感じなかつた。無理矢理聲を張り上げてゐるのではない。 オペラのベル・カント唱法のやうに實に滑らかなのだ。 そしてギターの凄さに目を瞠る。 目の前では超絶技巧が繰り廣げられてゐるのだが, それらをちつとも感じさせない。 さらりと彈いてゐるやうに見えることに感心した。
さらに素晴しいのはギターや歌だけでなかつた。曲間のトークが實に樂しい。 フォルクローレやラテン音樂の持つある種の雰圍氣から, ややもすれば一種物哀しく重々しい空氣が演奏中に立ちこめることがある。 ところが曲が終れば,ギター漫談もかくやと云ふ絶妙な話術によつて, 會場のお客達から笑ひがもれる。その落差がまた面白い。
素晴しい時間を過ごした。